ジャズギター「これをやったらうまくなった」と思う10のこと

レッスンのときに「先生はどんな練習をしてきましたか(もしくはしていますか)?」と質問されることがよくあります。

これからもそのような質問をされることがあるかと思うので、自身の経験はもちろんのこと、尊敬している先生方、先輩方、そして音楽仲間の意見も参考にしつつまとめてみました。

たくさんありすぎるので、今回は、特に私自身「これは役に立った」と強く思う10を紹介いたします。

ジャズギター「これをやったらうまくなった」と思う10のこと

1.耳コピ(トランスクライブ)をする

音楽学校の学生時代に、ずば抜けて上手いギタリスト(同学年だが5つ年上)がいて、彼に「どんな練習をしているの?」と質問をしたところ即答で「耳コピだよ!耳コピ!」と返されました。何か特別な練習方法など聞けるかと思って期待をしていたのですがその返答ぶりに唖然としてしまいました。でも、それから25年ほど経ったいま、彼の助言は間違いなかったと断言できます。それでは耳コピによって何が得られる恩恵を、自身の経験に基づき記しておきます。


・分析能力が身についた
・テクニックが身についた
・譜面(五線譜)の書き方を覚えた

・指板の仕組みが分かってきた
・耳とリズムが良くなった

・他の楽器にも関心が強くなった


・分析能力が身についた
コピーするだけで終わらせたら、コピーが上手くなるだけで、本来の目的である“即興能力”は上がりません。「なぜそこでその音づかいをしているのか?」「どのポジションで、どういう運指で弾いているのか?」など、深く深く考えて、自分なりの答えが出せたときに初めて、血となり肉となります。

・テクニックが身についた
コピーもして分析ができたとしても、そこで終わらせてしまったら本来の目的である“即興演奏をする”ことはできません。音源から聴こえてくるグルーブやアーティキュレーションも含めて真似(練習)します。

・譜面(五線譜)の書き方を覚えた
音を拾えても、それを五線譜上にどのように記譜すれば良いのか?最初は全く分かりませんでしたが、市販されている譜面を見て答え合わせしたり、エッセンシャルディクショナリー※1で書き方を学んだりしました。
※1 『Essential Dictionary of MUSIC NOTATION』のこと。現在はYAMAHAから『楽典 楽譜の書き方』で発売中

・指板の仕組みが分かってきた
音を拾うことができたとしても、それをどこのポジションで、どういう運指で弾くのかをすごく考えるようになりました。6.のCAGEDの項にもつながるのですが、フレーズと指板をどのように関連付けるかを考えることは非常に重要なことです。

・耳が良くなった
音が聞き取れるまで何度も何度も聞き返すので、ある意味イヤートレーニングですよね。結果的に耳が良くなっただけではなく、採譜を通じてリズムも良くなったかと思います。

・他の楽器にも関心が強くなった
生徒さんによく「先生がやってるようなバッキングってどうやったらできるんですか?」と聞かれます。無意識にやっていることが多いのですが、自分のやっていることを改めて分析すると、ベースライン、ピアノ的なコンピング、ストリングスでよく出てくるようなクリシェ、ホーンセクションのリフレイン的なものなど様々な楽器を模しているようです。それらをギターでやるとどうなるかなぁ?と、私はいまでも研究しています。

2.曲を覚える

「曲を覚える」とは、ここでは単純に「譜面を見ないで演奏できる」ということだけではなく、以下の内容も含むものとします。
・Keyにおいてのメロディーとコードの関係を把握している
・一時的に覚えているだけではなく、5年後、10年後、それ以降も覚えている

「曲を覚える」と何が良いのか?
余裕が生まれます。余裕があるので、自分の演奏のことはもちろんのこと、他の演奏者が何をやっているのか?それに対してどのようにレスポンスしたら良いのか?などなど、色んなことに気を配れるようになります。もちろん、譜面を見ながら弾くというのも技術のひとつですし、読譜能力の高いミュージシャンであれば、譜面を見つつも耳とマインドはちゃんと外と向き合っているので、一概に「譜面を見ちゃダメ」という訳ではありません。でも、最初のうちは、できる限りしっかりと1曲1曲、深く深く覚えていきたいものです。譜面を見なくちゃ弾けないような曲を100曲〜200曲と練習するより、譜面を見なくても弾ける曲を10曲〜20曲と増やしていく方がより豊かなジャズギターライフを送れるかと思います。

3.コードトーンの練習をする

私は学生時代、即興演奏はできても、なんかジャズっぽくならない、そんなモヤモヤした気持ちを持ちながらも日々スケール練習をしていました。そんなある日「トライアドの練習が良い」との情報を得て練習するようになりました。するとどうでしょう?いままでコピーしてきたものや何気なく伴奏していたものがトライアドだということに気がついたのです。そもそも私はジャズギターをやる以前はバリバリのロック少年。Yngwie Malmsteenを始めあらゆる速弾き系のギタリストの曲をコピーしていました。そことリンクした時の感動は今でも忘れられません。

さて、話は戻って、なぜコードトーンが良いのか?というお話をします。そもそもスケールだけを練習していた頃は、ただ曲のKeyに合わせて何となくスケールを上下に弾いていただけだったのです。もちろん、スケールを上下に適当に弾いただけでも即興は即興ですし、これはこれで弾いていて気持ちが良いものです。ただし、それは伴奏があってこそ気持ちが良いのであって、伴奏をなくして同じことをしたらとても薄っぺらい音楽になるはずです。もちろん、コードトーンだけを弾いてもジャズっぽくはなりません。コードトーンに装飾音、経過音なども織り交ぜて初めてジャズの匂いが漂ってくるのです。いずれにしても、コードトーンをコントロールできるようになってからがスタート。コードトーンの延長線上にスケールがあるという感覚がつかめると、スケールはより活きてくるはずです。

4.Charlie Parkerの曲を練習する

Charlie Parkerの曲にチャレンジしてみましょう。おすすめの曲はDonna LeeConfirmation。ジャズ特有の代理和音、装飾音、アーティキュレーションが満載なので、テーマをコピーするだけでもかなり勉強になるかと思います。トランスクライブ(耳コピ)するのがベストですが、オムニブックもおすすめです。技術的にはギターで弾くには難易度が高めなので、ギター初心者の方にはおすすめできませんが、いつかチャレンジしていただきたいです。

5.セッションを重ねる

個人練習とセッションは、まるで別物です。セッションの醍醐味は周りの演奏者と反応し合うことです。しかしながら、個人練習しているのとあまり変わらない方もいます。技術的な問題も大きいですが、マインドの問題もあるかと思います。如何にオープンマインドでいられるか?それが試される場こそセッションです。あと、セッションに参加することによって、いろんな曲や、演奏パターンを経験できます。近年ではセッションできる場所がかなり増えたように思います。「もっと上手くなってから行く」という気持ちも十分に理解はできますが、百聞は一見にしかず、1〜2曲でも弾ける曲ができたら勇気をもって参加してみましょう。

6.CAGEDで把握する

「CAGED」とはコードのフォームのことで、それらのコードフォームとスケール・コードトーン・メロディーを関連付けて覚えようということです。ジャンルを問わず、あらゆるギタリストがこのシステムを意識的・無意識的に採用しているかと思います。私がこのシステムを採用したのは、実は講師になってから。2000年頃の話です。ちょうどその頃、みなさんご存知のトモ藤田さんの教本が発売されて、私はそれを見て衝撃を受けました。とにかく当時は「こんな合理的な捉え方があるんだー!」と目からウロコでした。このシステムを取り入れてからは、指板の捉え方と運指が明確になり、覚えるのが早くなったり、ミスが減ったりと良いことづくめ。もちろん、システムに囚われすぎてしまうと、自由な発想の妨げにもなるので依存しすぎるのも問題。このあたりはうまくバランスを取っていきたいところ。

7.クラシックギターを学ぶ

私は30代半ばで本格的にクラシックギターを学ぶようになりました。現在も継続中ですし、これからもずっと学び続けていきます。具体的にはカルリ、カルカッシ、ソル、タレガあたりのエチュードや小曲を練習しています。さて、なぜクラシックが良いのか?それは「ギターを弾く」ということを、根本的に見つめ直すことができるからです。それは右手や左手のフォームだったり、音の出し方、脱力、奏法全般、諸々1から考え直しました。結果、エレキに持ち替えたときに、より自由な運指やポジションの捉え方ができうようになったり、ピックの扱い方も変わり、音色のバリエーションがとても増えたように思います。あと、以前はソロギター(独奏)や、イントロ出しが苦手だったのですが、クラシックギターをやるようになってからは、ソロ演奏の技術が向上したためか、以前ほどの苦手意識はなくなりました。

8.録音・録画をする

若い頃、セッション仲間と一緒にセッションしては録音し(この時代はテープレコーダ)セッション後はそれをつまみに飲んだくれてました。セッション後に「お前のここはああだこうだ」といろいろと意見を交わしながら切磋琢磨したものです。今はスマホをはじめ、高音質・高画質で記録できるガジェットが身近にありますね。録音・録画したものを演奏後に確認することによって、演奏中には気がつかなかった良いところ・悪いところが発見できます。私は日頃DAWで教材や自作を録音したり、YouTubeで動画をアップしているので、自分がどんな表情で、どんな音色で演奏しているのかが良く分かります。自分の演奏の記録を俯瞰することは時に残酷ではあるのですが、見て見ぬ振りをし続けては進歩はありません。最初はどんな人だって未熟なのです。録音・録画に慣れないうちは「うわぁ〜ダメだぁ〜」と悔しい思いをするかと思いますが、そんな中でも良いところを見つける観点が持てるようになると良いかと思います。

9.ソロを作る 

高校2年生の文化祭でバンド演奏(コピーバンド)をする機会を得て本番に向けて日々練習をしていました。ところが演奏する予定の曲の中に超絶技巧なソロ(Shy BoyAddicted To That Rush)があり「あぁ、本番までに間に合わない」と焦る日々。そんな状況の中苦し紛れに「じゃぁソロを自分で作ってしまおう」と思い、タブ譜に自分で考えたソロを書き込んで練習。結果本番ではそれなりに上手く弾けました。その経験を経て、なんとなくアドリブができるようになったのを覚えています。恐らく「あぁでもない、こうでもない」と試行錯誤しているうちに、ソロを作る土台となる思考が出来上がったのだと思います。
 
さて、ジャズに話を戻します。それでは「自分で考えたジャズのソロを五線譜に書き入れてください」と言われたらすぐにできるでしょうか?恐らく、難しいとお感じになるのではないでしょうか?時間をかけて書いてもなかなかカッコいいソロを書くのは難しいかと思います。そのような状況でリアルタイムでかっこいいソロが弾けというのは無理難題…。そんな時はぜひ1.耳コピ(トランスクライブ)をする4.Charlie Parkerの曲を練習するを試みてください。レジェンド達のアドリブの分析をやりつつ、自分のソロを考えるということを繰り返しているうちに、最初はパクリ同然のようでも、最終的には自分の歌になってくるかと思います。時間はかかると思いますが、まずは真似事でも良いので空の五線譜に自分の思いを書き込んでみましょう。

10.ワンコードで練習する

ジャズギターの練習を始めた頃(25年くら前)、片面5分のカセットテープを大量に買ってきて、AIWAのテープレコーダーで5分間の伴奏をひたすら録音しました。録音の内容は、例えばCma7,C7,Cm7,Cm7(b5),Cdim7のコード伴奏をそれぞれのテープに別々に録音。録音しては再生して練習。そんな日々が続きました。だんだん慣れてくると今度は欲がでてきて||:Cma7|A7|Dm7|G7:||のような循環コードを各Key吹き込んで練習。習熟度に合わせてどんどんとレベルアップして、ある程度自信がついてから実際のスタンダードソングの伴奏を録音したように思います。これ25年前の話ですが、今でしたらルーパーで気軽に練習できますね。今思えば、伴奏の練習にもなったなぁと。この頃はあまり意識してなかったですが、習熟度に合わせた練習って大事ですね。この頃の自分にはとても合った練習方法だったと思います。

まとめ

1.耳コピ(トランスクライブ)をする
2.曲を覚える
3.コードトーンの練習をする
4.Charlie Parkerの曲を練習する
5.セッションを重ねる
6.CAGEDで把握する
7.クラシックギターを学ぶ

8.録音・録画をする
9.ソロを作る

10.ワンコードで練習する

以上10の項目をバーっと思いつくまでに書き記しました。全部いっぺんにやる必要もなく、まずは自分にできそうなこと、やれそうなことから始めてみるのが良いと思います。

あと、これはあくまでも私が思っていることであり、すべての方々に万能に働くものではありませんし、私自身ジャズを始めたのがギターを始めてから3〜4年目で、テクニック的にはある程度出来上がっていた状態だったので、そのような経緯を踏まえた上で参考にしていただけたら幸いです。

それでは楽しいジャズギターライフをお過ごしください!!!

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